肩甲骨まわりのリンパマッサージ|巡りを整える4ステップ
夕方、ふと膝の裏に手をやったとき。本来ならやわらかくくぼんでいるはずのそこが、平らに張っていたり、押すとコリコリしたりする。そんな感覚に心当たりはありませんか。
膝裏は、脚の巡りにとって関所のような場所です。ここには膝窩リンパ節という、膝の裏側のくぼみにあるリンパ節があり、脚から戻ってくるリンパ液がいったん集まります。
ところが膝裏は、座っているあいだじゅう折り曲げられ、押し潰されている場所でもあります。脚のなかで、いちばん滞りが起きやすい条件がそろっているのです。
このコラムでは、膝裏そのものに的をしぼって、いまの状態の見分け方と、1日2分でできるリンパマッサージのやり方をご紹介します。
膝裏に痛みがある場合は、ケアの前に原因の見分けが必要です。そのときは膝裏が痛い時は、どうしたらいい?原因の見分け方と対処法を先にお読みください。
両脚を前に伸ばして座り、膝の裏に指の腹を当ててみます。左右を比べながら、次の項目を確かめてみてください。
膝裏セルフチェック
1つか2つ当てはまる方は、その日の疲れや座りっぱなしの時間が出ているのかもしれません。3つ以上当てはまり、しかもそれが毎日続いているようなら、膝裏の巡りが滞った状態が定着しつつあると考えられます。左右で差が大きい場合も、体の使い方の癖が出ているサインとして受け止めてよいと思います。
心臓からいちばん遠い、大きな関門だからリンパ節は、リンパ管の要所にある濾過装置のような器官です。体内の老廃物や余分な水分を集めて処理し、あわせてウイルスや細菌から体を守る免疫のはたらきも担っています。膝窩リンパ節は、そのなかでも心臓から最も遠い位置にある大きなリンパ節のひとつです。
リンパ液は心臓のようなポンプを持たず、筋肉の動きと呼吸に押されてゆっくり上へ運ばれていきます。つまり、いちばん下流にある膝裏には、重力に逆らって届いた水分と老廃物が集まってくるのに、それを先へ押し出す力はいちばん弱い。構造として、渋滞が起きやすい場所なのです。
膝裏がふくらはぎや太ももと決定的に違うのは、関節の裏側だという点です。椅子に座っている時間、電車に乗っている時間、床で脚を抱えている時間。そのあいだ膝裏はずっと折りたたまれ、座面の縁に当たって圧迫され続けています。
ホースを折り曲げれば水が止まるように、曲げっぱなしの膝裏では、リンパ液も静脈の血液も流れにくくなります。デスクワークの方の膝裏が硬くなりやすいのは、揉み方が足りないからではなく、曲げている時間が長いからです。ここが、ケアの方向を決める分かれ目になります。
川を思い浮かべてみてください。川がリンパ管、流れる水がリンパ液、途中に置かれた網がリンパ節です。網にゴミが溜まって目詰まりを起こすと、その先へ水が流れないだけでなく、上流の水まで堰き止められていきます。
膝裏で起きていることも同じです。足首やふくらはぎのむくみが取れにくいときも、膝上がもたついて見えるときも、その通り道である膝裏が詰まったままでは、どちらも抜けていきません。足のだるさが夕方に決まって出る方も、一度ここを疑ってみる価値があります。
膝裏の滞りは、むくみだけの話にとどまりません。膝裏が硬く張ったままだと、膝の曲げ伸ばしがわずかに重くなり、歩幅が小さくなります。すると、ふくらはぎの筋肉を使う量が減り、脚の巡りを支えるポンプがさらに弱まる。この輪がゆっくり回り続けます。
逆に、膝裏がやわらかさを取り戻すと、膝まわりに溜まっていた水分が上へ抜けやすくなります。膝の輪郭が出てくる、膝上の横ジワが目立ちにくくなる、ふくらはぎの張りが軽くなる。多くの方が最初に気づかれるのは、こうした見た目や体感の小さな変化です。
脚は、細くしようとするより、巡らせるほうが早く応えてくれます。たまった水分と老廃物を先へ送り出す。膝裏のケアは、その通り道を開ける作業だとお考えください。脚全体のバランスから見直したい方は、原因別・部位別の脚やせマッサージもあわせてご覧いただけます。
こんな日は、膝裏に触れないでください
そのうえで、膝裏をケアするときの前提を3つお伝えします。
ひとつめは、温まってから行うこと。入浴後や、湯船のなかが向いています。冷えて硬くなった膝裏を無理に動かすより、体温が上がっているときのほうが、少ない力で変化が出やすくなります。
ふたつめは、強さを「気持ちいい」の範囲に収めること。膝裏は皮膚が薄く、神経や血管が浅いところを通っています。強く押し込めば流れるという場所ではありません。痛みを感じる強さは、かえって組織を守ろうとする緊張を招きます。
みっつめは、グリグリと揉まないこと。硬いものに触れると、つい潰したくなります。けれど膝裏に関しては、押し込むより、包んでゆるめて上へ送るほうが理にかなっています。手の当て方そのものに自信がない方は、リンパマッサージの基本手技を先に確認しておくと安心です。
床でも椅子でも、どちらでも構いません。片脚ずつ行います。
準備
手のひらで包んで、温める(20秒)
膝を軽く立て、両手のひらで膝裏を下から包み込みます。こするのではなく、手の体温をあずけるつもりで、20秒ほどそのまま。呼吸を深くすると、膝裏の緊張がゆるみやすくなります。冷たさを感じていた方は、ここだけでも変化がわかると思います。
STEP 1
膝窩リンパ節に、呼び水をつくる(左右各30秒)
親指以外の4本の指をそろえ、指の腹を膝裏のくぼみに当てます。そこから、次のリズムで3回くり返します。

押す強さは、脚を持ち上げる手の重みで十分です。力を抜く瞬間に、溜まっていたものが動き出すイメージを持つと、自然とやさしい圧になります。
STEP 2
下から集めて、上へ送り出す(左右各1分)
開いた関門に、下流のものを運び込み、そのまま先へ送ります。左右の手を交互に使って、一方向にさすります。

戻すときは肌から手を離し、上へ向かう動きだけをくり返してください。往復させると、せっかく送ったものが戻ってしまいます。
仕上げに、鎖骨の下を左右10秒ずつやさしくさすっておくと、より通りやすくなります。鎖骨リンパ節は全身のリンパが最後に合流する出口にあたり、ここが詰まっていると、途中をどれだけ流しても抜けにくいためです。出口のケアは鎖骨のリンパマッサージで詳しくご紹介しています。
膝裏だけでは物足りないと感じた日は、通り道の前後を足してみてください。手前ならふくらはぎのマッサージ、先なら鼠径部のリンパマッサージです。なお、ここでご紹介した手技は、渡辺佳子の著書『体の内からキレイになる経絡リンパマッサージ』から一部を抜粋し、再構成したものです。
膝裏の滞りは、揉む時間よりも、曲げている時間に左右されます。マッサージと同じくらい、日中の膝の角度を見直してみてください。
膝裏のケアで、かえって遠回りになりやすい行動を挙げておきます。
硬いからと、強く揉み込む。膝裏の硬さは、筋肉のこわばりと水分の滞りが重なって生まれています。力で潰そうとすると、防御反応でさらに硬くなることがあります。
マッサージガンやフォームローラーを膝裏に当てる。ふくらはぎや太ももには向いていても、神経や血管が浅く通る膝裏は、道具で強い刺激を与えてよい場所ではありません。膝裏だけは手で行ってください。
膨らみを、揉んで散らそうとする。膝裏がぼこっと膨らんでいる場合、ベーカー嚢腫などの可能性が考えられます。自己判断で押すのは避けてください。
1回で長くやりすぎる。2分を毎日のほうが、10分を週1回より変化が出やすいと考えています。膝裏は、刺激の強さではなく回数で応えてくれる場所です。
次のような状態は、巡りの問題ではない可能性があります。セルフケアを続けず、整形外科などにご相談ください。
痛みがある場合に何が起きているのか、どこで見分けるのかは、膝裏の痛みの原因と対処法でくわしく整理しています。膝そのものの痛みが中心の方は、膝の痛みを和らげるマッサージもあわせてご覧ください。
Q. 膝裏のくぼみは、どのくらいで戻ってきますか。
A. その日の夕方のむくみであれば、1回のケアでも軽くなったと感じる方が多くいらっしゃいます。一方、何年もかけて硬くなった膝裏は、そう早くは変わりません。まずは2週間、毎日続けたところで最初の判断をしてみてください。体感ではありますが、変化を感じはじめる方が多いのはこのあたりです。
Q. 膝裏だけを触っていれば、むくみは軽くなりますか。
A. 膝裏は関所であって、脚のすべてではありません。時間がない日は膝裏だけでも構いませんが、余裕があるときはふくらはぎと脚の付け根を足すと、通り道がつながります。順番は、下から上へ。これだけ守っていただければ十分です。
Q. 膝裏が冷たいのですが、これは滞りのサインでしょうか。
A. 太ももやふくらはぎと比べて膝裏だけが冷たい場合、その周辺の巡りが落ちていると考えられます。冷えているところを強く刺激しても動きにくいので、まず準備の「包んで温める」を長めに行い、やわらいでから次へ進んでください。
Q. むくみがひどい日は、強めに流したほうがよいですか。
A. 強さではなく、回数を増やすほうをおすすめします。むくみが強い日ほど組織は張っていて、強い圧は負担になりやすいためです。朝と夜に分けて2回、あるいは日中に膝の曲げ伸ばしを挟む。そのほうが結果につながりやすいと考えています。
Q. 立ち仕事の場合も、やり方は同じでよいですか。
A. 手順は同じですが、重点が変わります。座り仕事の方は膝裏の圧迫が問題になりやすいので、準備とSTEP1を丁寧に。立ち仕事の方は下へ溜まった水分を戻すことが課題ですから、STEP2のさすり上げを長めにとってみてください。就寝前に脚を少し高くして休むのも助けになります。
セルフケアは、自分の手が届く範囲を、自分の力加減で行うものです。膝裏のように、深いところにあって、しかも繊細な場所は、どうしても限界があります。2週間続けても膝裏の硬さが変わらない、朝からすでに重いという方は、一度おまかせいただくのもひとつの方法です。
銀座ナチュラルタイムは、銀座で30年の歴史を持つ鍼灸リンパマッサージの治療院です。膝裏だけを施術するのではなく、脚全体から鼠径部、そして鎖骨までの通り道をたどりながら、どこで流れが止まっているかを確かめていきます。国家資格を持つ施術者が、お体の状態をうかがったうえで、おひとりずつ組み立てるオーダーメイドの施術です。
総院長の渡辺佳子は、著書70冊以上、監修誌1000誌を超える経絡リンパマッサージの第一人者です。美は健康の最上級というコンセプトのもと、施術の方針を設計しています。
施術の内容は経絡リンパマッサージのコースをご覧ください。冷えや疲れやすさなど、体質から整えたい方には鍼灸による体質改善もご用意しています。
膝裏は、心臓からいちばん遠く、1日のほとんどを折り曲げられて過ごす場所です。滞って当然の条件がそろっていて、だからこそ、ここを開けておくことに意味があります。
やることは多くありません。包んで温める。ゆっくり押して、ゆっくりゆるめる。下から上へ送る。この3つを2分。あとは、日中に膝を伸ばす時間をつくること。強い刺激も、道具も必要ありません。
脚は、細くしようとするより、巡らせるほうが素直に応えてくれます。今夜お風呂上がりに、まず膝裏に手を当てるところから始めてみてください。
銀座ナチュラルタイムグループ 総院長 一般社団法人 経絡リンパマッサージ協会 代表理事 東京医療専門学校 教員養成科 オイルマッサージ臨床学の非常勤講師を長年務める。 経絡リンパマッサージの第一人者として、海外書籍を含め70冊以上、雑誌などの監修誌は1000誌を超える実績を持つ。TV、雑誌、企業の美容健康関連商品などで多くの監修を手がける。女性のための健康と美のセルフケアの普及、鍼灸マッサージ師の臨床教育などにも力を入れている。また、自らの臨床経験を生かし、健康や医療、予防医学の大切さをライフワークとして伝え続けている。さらに、身近な美容やダイエット、食事や生活を通じて、ベビーやママ、女性たちの幸せな毎日を応援している。