肩甲骨まわりのリンパマッサージ|巡りを整える4ステップ
むくみは、原因が一つではありません。塩分の多い食事の翌朝に出るむくみと、疲れが抜けないときに出るむくみ、そして病気が背景にあるむくみとでは、とるべき対処がまったく違います。
「マッサージをしてもすぐ元に戻ってしまう」というご相談を、施術の現場でよくいただきます。お話をうかがうと、やり方そのものより、原因の見立てが合っていないことが少なくありません。夕方の脚のむくみと、朝の顔のむくみでは、そもそも流すべき場所が違うからです。
この記事では、むくみが起こる仕組みと、原因ごとの見分け方、そして医療機関にご相談いただきたい目安までを整理しました。手順に入る前に、ご自分のむくみがどれにあたるのかを確かめていただくための入口として、お使いください。

人の体は、およそ60パーセントが水分でできています。この水分は血管の中と外を絶えず行き来していて、全体として一定のバランスが保たれています。
血管から細胞のすき間へしみ出した水分は、通常であれば静脈とリンパ管が回収していきます。この回収が追いつかなくなり、細胞と細胞のあいだに水分が留まった状態が、むくみです。医学的には浮腫と呼び、東洋医学では「水滞」と言います。
むくみが起きるまで
血流とリンパの流れが滞る
↓
水分と老廃物が回収されない
↓
細胞のすき間に水分が留まる
↓
むくみとして現れる
ここで押さえていただきたいのは、むくみは水分を摂りすぎたから起きるのではなく、回収と排泄が滞ったときに起きるということです。「水を控えればむくまない」という考え方は、この点で逆になっています。水分を減らすと血液が濃くなり、体はかえって水分を手放さなくなります。

原因によって、むくみの出る場所も時間帯も変わります。ご自分の出方に近いものを探してみてください。複数が重なっていることも、よくあります。
体内の塩分濃度は、常に一定に保たれています。塩分を多く摂ると、体は濃度を薄めようとして水分の排出を控え、内側に水分を溜め込みます。溜まった水分は血管やリンパ管から漏れ出し、皮膚の下にとどまります。
出方の特徴:味の濃い食事やお酒の翌朝、顔やまぶたが腫れぼったい。指輪がきつい。
立ちっぱなし、座りっぱなしが続くと、重力の影響で足先の水分が心臓へ戻りにくくなります。本来これを助けているのが、ふくらはぎの筋ポンプ作用です。静脈には血液の逆流を防ぐ弁があり、周囲の筋肉が縮むたびに血液が上へ押し上げられる仕組みになっています。筋肉が動かなければ、このポンプは働きません。
リンパにいたっては、心臓のようなポンプそのものがありません。周囲の筋肉の動きだけを頼りに流れているため、動かない時間が長いほど滞ります。
出方の特徴:夕方になるほど脚が重い。靴下の跡が深く残る。靴がきつくなる。
生理前にむくみやすくなるのは、黄体ホルモンの働きによるものと考えられています。黄体ホルモンは排卵期から生理前にかけて増え、体内に水分を溜め込む方向に働きます。生理が始まると減少し、むくみも引いていきます。
周期に沿って起きる変化ですので、無理に抑え込もうとせず、体を冷やさない、塩分を控えめにする、睡眠をとるといったところで整えていくほうが、体にとって自然です。
出方の特徴:毎月決まった時期に重なる。生理が始まると軽くなる。
過度な活動が続くと、疲労物質である活性酸素が多く発生します。活性酸素は周囲の細胞を傷つけるため、余分な水分を回収するという体の働き自体を乱すことがあります。疲れるとむくみ、むくむと体が重くなってさらに動かなくなる、という循環に入りやすいのが、この原因の厄介なところです。
仕組みについては疲れとむくみの関係を解説した記事で、疲労の定義から順を追って説明しています。
出方の特徴:疲れ果てて眠った翌朝、顔がぱんぱんになっている。休んでも抜けない。
ストレスを受けると、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、血管とリンパ管の間で水分を出し入れする働きが低下すると考えられています。加えて、交感神経が優位な状態が続くと血管が縮み、血の巡りそのものが落ちます。
この経路についてはむくみとストレスの関係をまとめた記事で詳しく触れています。
出方の特徴:忙しい時期や気を張る時期に重なる。肩や首の張りをともなう。
体が冷えると血管が縮み、末端まで血が巡りにくくなります。巡りが落ちれば回収も滞るため、冷えとむくみは同時に起こりやすく、しかも互いを強め合います。夏の冷房や、薄着での長時間の外出でも起こります。
出方の特徴:足先が冷たいのに、ふくらはぎは張っている。

ここまでにご説明した6つは、いずれも生活の中で起こる一時的なむくみです。一晩休めば、ある程度は引いていきます。
一方で、むくみは病気のサインとして現れることもあります。背景として考えられるものには、心不全、腎臓の機能低下、肝硬変、甲状腺の機能低下、膠原病、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、リンパ管の閉塞などがあり、これらは医療機関での治療が必要です。服用しているお薬の影響で出ることもあります。
ご自身だけで判断するのは難しい領域です。次のいずれかに当てはまる場合は、セルフケアを始める前に、内科などの医療機関にご相談ください。
医療機関にご相談いただきたい目安
むくみが一過性のものなのか、何かが隠れているのか。この切り分けが、ケアの出発点になります。迷われた場合は、当院でもご相談を承っています。

東洋医学では、体の中を「気」「血」「津液」の3つが巡っていると考えます。生命の根源となるエネルギーが気、全身を養う血液にあたるものが血、体液や分泌物を指すのが津液です。この3つが滞りなく巡っている状態を、健康と捉えます。
気の巡りが乱れると冷えが現れ、冷えれば血も滞ってコリになります。そこからさらに進んで津液の流れまで滞った状態が、むくみ、つまり水滞です。冷え、コリ、むくみが同じ方に重なって出ることが多いのは、この順序でつながっているためだと考えられています。
気と血の通り道が「経絡」で、その上にあらわれる反応点がツボです。経絡は全身に張りめぐらされていて、体の上下を結ぶように走っています。これは、体の先端から中心へ向かって流すというリンパマッサージの方向と、ちょうど重なります。西洋医学のリンパ学と東洋医学の経絡を合わせてケアするのが、当院の経絡リンパマッサージの考え方です。
なかでも水分代謝に深く関わるのが「腎」です。西洋医学の腎臓が血液から不要な水分と老廃物をこし取るのと同じように、東洋医学の腎も水分代謝の要とされています。全身を流すときに足裏から始めるのは、ここに腎の経絡が通っているためです。
同じむくみでも、出ている場所によって、手をつける順番が変わります。ご自分に近いところから読み進めてください。
夕方になるほど脚が重くなる方。ふくらはぎの筋ポンプが働いていないぶんを、手で補うことになります。足首からひざ裏、そして脚のつけ根のそけいリンパ節へ向かって、下から上へ流していくのが順当です。手順は足のリンパマッサージのやり方にまとめています。ふくらはぎだけを強くもんでも戻りにくいのは、流し込む先であるそけい部が硬いままだからということが少なくありません。
朝、顔がむくんでいる方。顔だけを触っても戻りにくいことがあります。顔から流れたリンパは最終的に鎖骨へ集まるため、先に首と鎖骨をゆるめて出口を開けておくほうが、流れが変わります。顔のリンパマッサージを試してもすっきりしないという方は、首のこりが背景にあることもあります。
体全体がすっきりしない、どこから手をつけてよいかわからないという方。足裏の湧泉というツボから始めて、脚、そけい部、鎖骨、首へと順に流していく全身の手順が向いています。全身のリンパマッサージのやり方で、総院長の渡辺佳子が順を追って解説しています。部分的に流すより、出口から順に開けていくほうが結果として早いことが多いためです。
疲れが抜けない日が続いているとき。マッサージより先に、睡眠と入浴を整えるほうが効くことがあります。疲労とむくみは互いを強め合うため、どちらか一方だけを追いかけても抜けにくいのです。この循環については疲れとむくみの記事をご覧ください。
気を張る時期が続いているとき。ストレスによるむくみは、流すことに加えて、ゆるめることが必要になります。むくみとストレスの記事で、その見分け方に触れています。
さする方向や圧の強さといった手技そのものを整理したい方は、リンパマッサージの正しいやり方から先に読まれると、どの部位のケアにも応用がききます。

むくみは、溜めてから流すより、溜めない日を積み重ねるほうが確かです。どれも当たり前のことですが、意識して続けている方は、実はそう多くありません。
むくみを足し算で解決しようとすると、きりがありません。溜まったものをどう巡らせるか、という引き算の発想のほうが、体には無理がないと考えています。

A. 一時的に減ることはありますが、それは体脂肪が減ったわけではありません。溜まっていた水分が排泄されたぶんの変化で、痩身とは別のものです。
当院では、むくみのケアをダイエットとしてはご案内していません。体重計の数字よりも、脚が軽くなった、靴下の跡が浅くなった、朝の顔が違う、といった体感のほうが、巡りが戻ってきたことの目安として確かだと考えています。
A. 逆になることがあります。水分が足りないと血液が濃くなり、体は水分を手放さなくなります。「水太りしやすいから」と摂取量を制限される方がいらっしゃいますが、むくみの原因は摂った量ではなく、排泄が滞っていることのほうです。控えるのは水ではなく、塩分と考えてください。
A. 強く押す必要はありません。セルフケアで届く毛細リンパ管は皮膚のすぐ下を通っているため、撫でる、さするといった弱い刺激がちょうどよい強さになります。強く押すと、かえって流れを妨げることもあります。ご自身が心地よいと感じる圧を目安にしてください。
A. まとめて長く行うより、毎日5分から10分を続けるほうが体は変わりやすいと考えています。むくみは日々発生するものですので、その日のうちに戻しておく習慣のほうが理にかなっています。しばらく続けても戻りにくい場合は、原因がほかにあることも考えられますので、一度ご相談ください。
銀座ナチュラルタイムグループ 総院長 一般社団法人 経絡リンパマッサージ協会 代表理事 東京医療専門学校 教員養成科 オイルマッサージ臨床学の非常勤講師を長年務める。 経絡リンパマッサージの第一人者として、海外書籍を含め70冊以上、雑誌などの監修誌は1000誌を超える実績を持つ。TV、雑誌、企業の美容健康関連商品などで多くの監修を手がける。女性のための健康と美のセルフケアの普及、鍼灸マッサージ師の臨床教育などにも力を入れている。また、自らの臨床経験を生かし、健康や医療、予防医学の大切さをライフワークとして伝え続けている。さらに、身近な美容やダイエット、食事や生活を通じて、ベビーやママ、女性たちの幸せな毎日を応援している。